そけいヘルニアって子供の病気?と思いがちですが、むしろ 40 代~60 代の成人男性に多くみられる良性疾患です。子供のヘルニアは自然に治る可能性もありますが、成人の治療には手術が必要になってきます。
実は、誰でも赤ちゃんの時におなかの中で閉じる穴があります。その閉じていた穴の組織が加齢に伴って弱くなってくることが原因の多くにあたります。重い荷物を持つなどでおなかに力がかかることをきっかけに、下腹部から足の付け根(そけい部)にかけた部分から腹膜が飛び出してくるのが大人のそけいヘルニアです。一般に脱腸と呼ばれます。運動のためと思ってハードなトレーニングを行った結果おなかに負担がかかり、発症することもあります。はじめは立った時とおなかに力が入った瞬間にふくらみに気付くことが多く、その時に痛みを感じなければあわてなくて大丈夫です。しかし時間の経過とともに痛みだしたり指で押してももどらなくなったりと、腫れが急にかたくなったりもします。その場合は緊急手術を要することになります。そけいヘルニアの症状がありましたら、症状がすすむ前に早めに診察を受けられることをおすすめします。心身の余裕のためにも一番の早道です。
そけいヘルニア Q&A
- 他にも日常生活で気をつけたほうがいいことはありますか?
- くしゃみ、咳をしやすい方は下腹部に負担がかかるので注意が必要です。
便秘をしないことも大切ですね。また喫煙は細胞の組織をもろくさせるのでリスクがあがります。
おなかに力がかかる仕事、また美容師さんのように立ち仕事の長い方もなりやすくなってきます。
読者の皆様からのご質問に誌面上で村田先生がお答えします。編集室までおハガキでお送りください。そけいヘルニアの他、下肢静脈瘤、痔、巻き爪、やけど、床ずれについてもお寄せください。
第
3
回
そけいヘルニア手術前の予約と診察プロセス
足の付け根あたりにふくらみを感じ、あれっ?と気づく「そけいヘルニア」。症状による手術の必要性を判断するために、初診は次のような流れで診察を進めていきます。
- [問診]患者さんの自覚症状をしっかりと聴く。
- [視診]立った状態でのふくれ具合を見る。
- [触診]患部を触って大きさや硬さなどを確認。
- [超音波検査]横になっておなかに力を入れてもらい、ふくらみのある場所を超音波で観察。医師と一緒に患者さん自身もモニターを見ながら確認。
以上の診察後、手術のための心電図、血液検査を行い、予定日を決めて同意書にサインをしていただき終了になります。
初診はお電話で予約されるとスムーズです。直接お越しの場合は午後2時から受け付けています。また、県外など遠方からの来院が困難な方は、電話での問診を村田先生と充分に重ねた上で、手術の予定を組む方法にも対応しています。どうぞご相談ください。
「はじめの問診では、きめ細やかにご説明をします。手術が決まった患者さんには、実際の施術の写真画像をみてもらうことで視覚情報でも納得していただいています。写真には出血などは写っていませんが、気のすすまない患者さんにはもちろんお見せしませんのでご安心ください」。日帰りの手術によって、患者さんが抱えるそれぞれの症状から一日でも早く解き放されることを目指しています。
そけいヘルニア Q&A
- 診察は今月に予約し、手術は3ヶ月後の長期休暇に行いたいと思っているのですが、間が長くあいてしまっても大丈夫ですか?
- 問題ありません。ただ時間の経過で症状が変化しますので、術前の検査(心電図、血液検査)は1週間位前に行います。ご希望の手術日を予約するために早めに初診に来られることは有効です。海外からは、帰国に合わせて診察と手術日の予約をする方もいます。
学会への論文、そして外科手術の症例を発信し続けている村田先生。日帰り外科手術でひとりでも多くの患者さんに質の高い技術を提供したいと話す。
皮膚・排泄ケア認定看護師の熊谷英子統括看護部長(右)と小野寺紀文事務次長。
2人の連携により在宅ケア、往診、訪問看護の最新のケアと安心を患者さんへ。熊谷看護師の " いつでもどこでも素敵なあなたの笑顔が見たいから " という思いが笑顔にあふれているよう。
第
6
回
綿密な調整で進める体にやさしい麻酔方法
麻酔は年齢、男女、体格など、一人一人に合わせた方法と量の加減で行われます。種類は3種類。マスクによる全身麻酔、おなか周りのための局所麻酔、また、個人差で痛みに敏感な方や男性には硬膜外麻酔(短時間に少し深く効かせる麻酔)を追加することもあります。特に高齢の方には、体の負担が小さくなるように全身麻酔と局所麻酔の量のバランスを綿密に調整します。日帰り外科手術の全身麻酔は、オフにして名前を呼べばすぐに答えられる程の浅いものなので、手術後にスムーズに目が覚めます。麻酔法は手術前の診察と体調問診で決定しますので、緊張がとれないようでも心配はいりません。表情などからも充分考慮しますので、気持ちもやわらいでもらえるでしょう。傷口を閉じる前に麻酔が覚めるタイミングをもっていき、その時「おなかに力をいれてください」「咳ばらいをしてください」と、お呼びかけしますので、頑張ってやってみてください。シートがきちんとフィットして脱腸を抑えているかを確認でき、再発予防になります。そして麻酔薬を酸素に切り替えて縫合し、終了です。間もなく痛みのない状態で目が覚め、痛み止めを飲んで 1 時間から2時間、回復室で休んでいただきます。看護士と一緒にふらふらしないでトイレに行ける状態を確認できればもうお帰りいただけます。
そけいヘルニア Q&A
- 手術創(縫合された傷)の長さは何センチくらいですか。
- 昔は 6 ㎝位が平均でしたが、シートが使えるようになってからは男性で2㎝~3 ㎝、女性が 1,5 ㎝~2㎝ほどです。体格が大きい方は、男女それぞれ、プラス 1 ㎝位になります。
- 家に帰ってからは、あまり動かずに静かに過ごしていればいいのですか。
- 日帰り外科手術は、手術したことを気にせずに日常生活ができる高度な手術です。術後の痛みは3日程でほとんどおさまるので、力仕事以外は普通に動いていただいて大丈夫です。辛い痛みを感じなければあえて慎重になる必要はありません。
~お知らせ~
平成 29 年1月から祝日も日帰り外科手術を行います。
休日は学会に合わせた不定休になります。電話、ホームページでご確認をお願い致します。
「手術前の診察の流れは、血圧、体調問診、術衣に着替えて貴金属類をはずし、心電図、サチュレーション(指先で酸素飽和度を計る)、点滴(静脈麻酔と鎮静剤)となります。何か不安なことなどがあれば、その時に伺います。手術後は1週間分の痛み止め、胃薬を処方しますので、充分に間に合います」